アメリカの「同時多発テロ事件」に思う
２００１年９月１１日にアメリカで発生した「同時多発テロ事件」で亡くなられた数多くの人たちへ心から哀悼の意を表します。テロにより世界貿易センターで犠牲、行方不明になられた人々、ハイジャックされた４機の飛行機に登場していて亡くなられた乗客の方達、そして救助活動により命を亡くされた消防士、警察官、そして国防総省で亡くなられた多くの人たちのご冥福をお祈りいたします。（合掌） 　テロはどのような条件でも正当化できるものではありません。たとえ政治信条、宗教理念、人種差別などを盾にテロをおこなうことは、民主主義社会に対する挑戦以外のなにものでもないからです。テロを憎みます。世界の各地に存在すると言われているテロ組織の壊滅を祈るばかりであります。 　同時多発テロ事件が勃発してからもう１３日もたちましたが、これまでの報道をテレビやラジオで視聴している限り、どうも報道に偏り、煽りがあるように感じてなりません。特に英国のＢＢＣや米国のＣＮＮの報道の仕方に問題があります。根拠のない不安を世界中にばら撒いているように感じるのは私だけでしょうか。 アメリカの被害現場、追悼集会、犠牲になられた人たちの英雄視などの映像を意識的に大量に流しています。 これに対して、アフガニスタンの一般市民や難民がおかれている状況や生活の現状の報道がほとんどといってないのです。逆に、タリバンの軍事政権の軍事行動の映像を故意にながしております。 オサマ・ビン・ラディンが犯人であれば早急にその証拠を出すべきではないかと思うのですが、調査結果を待たない憶測によるニュースがきわめて多いのです。 オサマ・ビン・ラディンのテロ組織以外にどのようなテロ組織が世界に存在しているかの報道がなされていないことが疑問です。 「やられたらやり返す」をモットーに「アフガニスタンへの報復」を正当化し過ぎている感じがします。同じ宗教でも「目には目を歯には歯を」もあれば「右の頬を打たれたら左の頬も出せ」、「罪を憎んで人を憎まず」の教えがあります。しかし、今回は「目には目を」の方向に誘導しているようです。 この報復攻撃（戦争）で戦死者を盾に儲かるであろう兵器産業（死の商人）、一部の財閥、石油ブローカーや政治家のニュースが出てきません。 アメリカの方針に協力しない国は文明社会の敵だと思わせるような報道がなされています。 　これらの報道は多分に米国と英国の世界に向けた政治的な駆け引きが含まれていると思わなければならないでしょう。 　テロ事件が発生した直後にイギリスのＢＢＣは早くも、未確認の情報源によると「パレスチナのテログループが犯行声明」を出したとテレビやラジオで発表しました。どうしたら、パレスチナやオサマ・ビン・ラディン関係であると名指して報道できるのでしょうか。このような軽率な報道によってアフガニスタンの国内で生活している大多数の一般市民、人道援助に来ているＮＧＯ（非政治組織）やＮＰＯ及び国連職員の生命を脅かすことになるのです。無責任きわまる報道だったと思うのです。 　もし、報道が正確であるとすれば敵はオサマ・ビン・ラディンのテロ組織、それをかくまっているタリバン軍事政権となります。それ以外のアフガニスタンで生活しているアフガン難民、普通の市民、北部同盟、元国王一派はなんの関わりもありません。アメリカが報復戦争を実行したとしても関係のない人たちを避けて攻撃できるのでしょうか。 　かつて、アフリカのケニアにあるアメリカ大使館の爆弾テロ事件の時も、確たる物的証拠が無いままにオサマ・ビン・ラディンの事件関与の疑いが濃厚という理由だけでクリントン政権はスーダンとアフガニスタンにミサイルを発射しました。しかし、スーダンの場合は、製薬会社、アフガニスタンの場合は遊牧民や通りがかりの人々などが犠牲になったと言われております。 　大部分のミサイルが攻撃地点から離れた場所に落ち、罪の無い人々が生命を落としたということは周知の事実でありました。標的であった軍事訓練所付近に落ちたミサイルも肝心のオサマ・ビン・ラディンに関係するグループの被害はほとんど皆無だったと聞きます。タリバンやこうした組織的グループのメンバーは発達した情報網を構築しているので、いち早く攻撃地点から脱出している可能性があるのです。前回のミサイル報復攻撃でも結局犠牲者の多くは「子供や女性」だったと言われております。 　更に、ＣＮＮやＢＢＣの報道は初めからオサマ・ビン・ラディンの名前を引き合いに出していますが米国内で高度な飛行システムを操作してテロを起こせるということは、大変な技術を要することであって誰でも簡単に旅客機を操縦できるものではありません。なぜアメリカ国内の勢力や、日本やヨーロッパのテロリストの組織名を一切報道しないのでしょうか。他の組織の謀略だという可能性は全くないのでしょうか？ 　アフガニスタンにあるインフラや農場や企業は先のソ連との戦争で壊滅的な被害を受けており、もう破壊する何物もないと言われております。国全体が「さら地」のようになって瓦礫の山だといいます。そのため、国民の生活は窮乏しており、食糧も生活物資もないとの報道があります。このような状態の国をアメリカはさらに爆撃しようとしております。破壊する何物も無いのに、もし、アメリカ軍が爆撃したとすれば「テロ組織」、「タリバン政権」の思う壺となることは明らかです。罪も無い女性や子供達が死んでいくことになると思うのです。それを心待ちにしているのがビン・ラディンやタリバンではないのでしょうか？ 　だからと言って、アメリカに報復戦争はするなとは言えませんし、言ったとしても報復戦争の流れは変らないでしょう。攻撃しないという手段もあるのですが、ニューヨークの同時多発テロ事件の現場をＴＶで見ると感情的に報復をしたくなるのも事実です。また、一定の報復攻撃をしないとテロの多発を招くおそれもあります。ただ、標的はアフガニスタンの一般国民が相手ではなく「アフガニスタンの一部のテロリスト集団」と「それを支援している政権」が相手であることを忘れてはなりません。無差別な攻撃だけはしていただきたくないのです。報復に報復を重ねて解決には程遠くなってしまうことを危惧しているからです。 　ノストラダムスの予言が１９９９年の７月から、２００１年の１０月になったとしたら大変なことになります。予言は信じませんが似たような状況にあることは確かでしょう。 ソ連が崩壊した後、核兵器の管理があまくなってテロリスト側に核兵器が渡っている恐れがあります。 アメリカが最終兵器である核爆弾を使用すればテロ側も使う可能性があります。そうすれば確実に地球人類は滅亡してしまいます。 ナチスドイツのヒットラーのような「たった一人の狂気じみた人間（オサマ・ビン・ラディン）」のために世界を巻き込んだ悲惨な戦いがはじまろうとしております。 日本政府は憲法の集団自衛権の行使に抵触することも無視して泥縄式に自衛隊の派遣をきめております。自衛隊法を拡大解釈して米国の艦船の護衛までしております。 このままの状態を続ければ確実にアメリカ軍の体制に組み込まれてしまうことは目に見えております。 先の戦争もそうでしたが自衛隊（軍隊）は国民を守ることが目的であるのにアメリカの支援に力を注ぎ、日本国の海域の警戒を怠っております。この報復戦争がおわるまで海上自衛隊と海上保安庁が共同で日本国の沿岸警戒にあたるべきでしょう。空の防衛は勿論、航空自衛隊の任務です。（自国の防衛を完全にしてからアメリカに協力するのが常識でしょう） マスコミは報復戦争を当然のような調子で番組制作をしております。もう少し、日本国民やアフガン国民側に立った報道ができないものなのでしょうか。インターネットがある現在、昔のような報道管制は難しい状態にあるのですから。 マスコミは「アメリカの報復戦争」に対する「反対運動」や「反戦運動の集会」などの記事をもっと大きくとり挙げていただきたいものです。相当勇気のいることでしょうが頑張って欲しいのです。 　私は決して左翼や右翼や国粋主義者ではありません。元船乗りとして一般の日本国民として世界を回ってきた経験から感じている事を書いているだけなのです。できれば報復戦争だけは避けていただきたいものです。武力では国際テロリスト達を撲滅できません。「経済制裁」、「テロリストを支援しない」、「政治的な圧力」、「国際連合の活用」、「国際刑事裁判所の活用」の手段も残されているのです。 　このたびの「アメリカ本土における同時多発テロ事件」はどのような理由があろうとも正当化できるものではありません。６４００人以上の罪も無い犠牲者を出したこのテロの実行集団は人類の敵です。しかしながら、このテロ集団を作ったのは当のアメリカでしょうし、ソ連崩壊後、放置したままでいたために「飼い犬に手を噛まれた」ようなものなのですから「アメリカにもいくらかの責任」はあるのです。その尻拭いのために世界を抱き込んで報復をしようとしていることには賛成できません。テロが発生するような状態の世界情勢を作っているのは誰なのでしょうか？（世界の警察官であるアメリカかな？） 世界のマスコミは偏った、煽るような報道はやめましよう。（もう２１世紀なのですよ！） 日本国はもっと自主性をもって憲法を守り、手順を踏んだ行動をしましょう。 アメリカは報復戦争を実施するに当たっては慎重に考えてほしいのです。武力を行使することは簡単ですが、逆に行使しないという困難な方向に向うことで国際テロ防止、テロ組織壊滅をする手段もあります。 日本はすでに在日米軍に対して多大な支援を現在も続けております。沖縄、佐世保、岩国、横須賀、厚木、三沢など多数の米軍施設や米軍人家族に対して「思いやり予算」といって貢献しております。さらに、今回の「報復戦争」に協力するのですから、経済的にどのようになるのでしょうか？ 日本国は安全ではありません。テロリストの攻撃に対しては世界一弱い国ですし、危機管理体制が全くなっていない国でもあります。また、ネットワークシステムの安全性（セキュリティー）も弱く、安全に対する意識が最も希薄な国でもあります。自分の命は自分で守りましょう。 【安全対策、政策の不備や危機管理の不備による事件や事故の一例】 ・サリドマイド事件　・水俣水銀汚染事件　・薬害エイズ事件　・茨城ＪＣＯの臨界事故　・防衛庁、警察不祥事、外務省、教育関係や法曹関係の不祥事、農林水産省の狂牛病対策の不祥事　・三菱自動車などの欠陥隠蔽事件　・大手企業の経営者の不祥事　・雪印乳業の食中毒事件　・長らく放置したハンセン（ライ）病の解決　・阪神淡路大震災時の危機管理体制の不備　・水俣湾埋め立て工事による様々な現象に対する対策の遅れ　・私鉄やＪＲ関係の列車事故の多発　・地下鉄サリン事件とオーム真理教に対する危機管理の欠如　・物作りを軽視した技術力低下によるロケット発射の連続失敗　・企業の社会責任、社会貢献を無視したリストラを連発する企業とそれを容認する政治　・場当たり的な政策と先送り政策　・知識偏重、偏差値重視の教育政策の失敗と教育界の荒廃　・指示待ち人間、マニュアル人間の大量育成による少年の心の荒廃と夢のない社会、等々まだまだありますが、これでは国が成り立っていきません。そんな日本国に私達は住んでいるのです。 　以上いろいろと述べてまいりましたが、こんなことを書くと「国賊」と言われそうです。先の戦争の時代であれば即刻憲兵に逮捕され、牢獄生活となるところでしょう。でも、船乗りとしてどうしても発言したかったのです。私としては「テロにも報復戦争」にも反対します。ほかの手段はないのでしょうか。皆さんはどのようにお考えですか？ Ｓｅｐｔｅｍｂｅｒ，２４ｔｈ，２００１．　ｂｙ　Ｈｉｄｅｔａｋａ　Ｓａｔｏ．
●弘前の津軽衆のＴＯＰへ戻る	●船乗りの発言集へ戻る